シェフの仕事
~リロンデル1895のある厨房③~

2019年に発売されたセミドライイーストリロンデル1895.
パン作りにおいて素材本来の旨みを最大限に生かすため、近年ベーカリー店で用いられている製法は冷蔵長時間発酵法。いわゆるオーバーナイト製法です。
冷蔵庫内でゆっくりと生地を熟成させる工程において、一番気にする点が発酵過多や、発酵不足。
そのどちらの悩みをも解決したイースト、それがセミドライイーストリロンデル1895です。
更に素材本来の旨みを引き出す以外に、発酵時間をコントロールできるため労働時間の短縮などと言った作業効率を上げる事が出来ると言うこともセミドライイーストリロンデル1895の特徴です。

今回、セミドライイーストリロンデル1985(以下、リロンデル1985)をご使用されている大阪府豊中市にあるBOULANGERIE SOURIRE(ブーランジェリースリール)オーナーシェフ田村雅人さんに使用感などのお話をお伺いさせていただきました。

■リロンデル1895を知られたきっかけは?

パン屋さんって、夜中にミキサー回すところって多いですよね。
私も夜中にミキサー回して仕込みをしていたのですが、この建物にお住まいの方から苦情が出たのです。

夜中にミキサーが回せない・・・
考えられる選択肢は色々ありますよね。最初に機械屋さんに言われたのが、縦型ミキサーからスパイラルミキサーに変えると言う提案でした。
「でもな~」って悩んでいたところ、タイミングよくトクラさんより、セミドライイーストの話と、そこからリロンデル1895の話になったのです。
それがきっかけです。

初めはセミドライイーストゴールドを使い始めました。
仕込みの作業は劇的に変わりました。
その後、リロンデル1895を使うようになりました。

それこそ、ある一定の温度帯になると「バチっと」発酵が止まってくれるのでリロンデル1895は理想的ですよね。

■リロンデル1985をお使いになられる以前はセミドライイーストをご使用されていたのでしょうか?

生イーストと、インスタントドライイーストを使っていました。
バゲットはインスタントドライイースト使ってを焼いていたのですが、トクラさんのところの講習会で仁瓶さんがセミドライイーストを使われていて、その時にリュスティックやバゲットを食べたのですが、「えらい美味しいもの作られるな、この人」って思ったのです。
その後、リュスティックをお店で焼いて仁瓶さんに写真を送らせていただきました。
そうしたら、「いい感じに焼けているね!」ってお返事下さり、その後、仁瓶さんが急にお店に来られてバゲット見て「いい感じに焼けているし、セミドライイーストもいいよ」っておっしゃられて。

仁瓶さんが言うなら、やってみようと。

実際に使うと違いが歴然。
それからセミドライイーストを使用するようになりました。

note


※仁瓶さんとは、1947年神奈川県生まれ。1970年に株式会社ドンクに入社。
ドンク青山店フランスパン工場から静岡西部店、銀座三越店を経て技術指導の役職に就任。1983年のフランス研修以降、社内外の講習会で活躍しながら、若手ブーランジェたちの指導や応援にも尽力。
著書に「Bon Painへの道」がある。
■生イーストや、インスタントドライイーストから、セミドライイーストに切り替える際は一気に変えられたのですか?

一気に変えました。
奥さんにも言わずにね。

感覚的な事なのですが、生地を作っている際に、ミキサーの中でガスが噴いてくるでしょ。
イーストを変えても、生地を作っている時の「あのガスの噴き方」になればいいのです。
最初に生地を捏ねた時にいけると思えば使えばいいと思うのです。
「これは自分で焼けるパンや!」って思えれば。

悪い時ももちろん分かります。
ミキサー回して「これはあかんわ」とか。

■インスタントドライイースト=ビタミンC入りと言う点で、生地が強くなると思うのですが、セミドライイーストに変えられた際に、どうやって生地を強くしたのですか?
※セミドライイーストはインスタントドライイーストと違いビタミンC不使用


大きく変えた事はないです。
あえて言うと生地のタッチ。

僕がパン作りで習ったことは、コシとアシのバランス。
これを身に着けておけば、どんな粉でもパンは出来ると聞いていたので、だから捏ねている時にどう勝負するかなのですよね。

捏ねている時の生地の固まりが「ぴよっと伸びる感じ」を覚えておいて、セミドライイーストに変えた時も同じようになるように見極める。

note


※コシとアシのバランスとは
コシは、生地にコシがあると言った一般的な考え方。
アシは、生地の伸縮性の事。


■酵母を変える。出来上がったパンの仕上がりは今までと同じになるのですか?

召し上がって下さるお客様に、変ったなと感じさせないようにします。

例えば、良く行くお蕎麦屋さんの出汁が変っていて、前の出汁の方が良かったって思ったら、次に絶対行かないじゃないですか!それと同じですよね。変えても変えた事を感じさせないようにします。
変らないようにする為の努力は惜しみません。

■パンの種類によって酵母の使い分けをされていますか?

セミドライイーストゴールドを使わないといけない生地ってあるじゃないですか?菓子パンとか・・・
その辺以外は、ほぼリロンデル1895を使っています。

食パンに関しては、以前はセミドライイースト赤のみで作っていましたが、それだとちょっと生地が噴いてくるのです。
僕みたいに一人で製造しているお店だと、逃げ場がないと言うか、生地に追われると言うか・・・
もう少し余裕をもって仕事がしたい。
ここであと3分待てば、噴き過ぎるといったシビアな生地を仕込んでいるわけにはいかないのです。
逆にもうちょっとの発酵だから、待ちたいなって思える方が気持ち的に楽じゃないですか!

パン屋の仕事=絶えず時間に追われる仕事。

様々な作業をしながら、生地に気を配る。
けど「あっ!過ぎてしまった・・・」とか、あるじゃないですか。

よく若い子が「噴き過ぎやねん!」って怒られたりね。
噴き過ぎやねんって言う前に「見てくれや!」って若い子は思っていますよね。

僕は思っていました(笑)

だから今は発酵をコントロールできるリロンデル1985を使い、仕事をしています。

食パンはリロンデル1895とセミドライイースト赤をミックスして生地を作っています。
リロンデル1985にない発酵の特徴をセミドライイースト赤で補ってもらうようなイメージです。

個人的には非常に使い勝手が良いです。
いい意味で、逃げ場があるといった感じのイーストです。

発酵さえとってしまえば、温度等をコントロールすれば止まってくれる。(緩やかになる)

前までは復温する時に、分割してから復温って考えられなかったのですが、リロンデル1895はそれが出来る。自分の都合に合わせて使えると言う点が良いです。

■最後になりましたが、今後についてお聞かせください。

効率よく労働して、僕らにとっても、お客様にとっても良い環境になればいいなと考えています。
その結果、地域にもちょっとお役に立てればと考えています。

そのためには様々なバランスを考え直さないといけないなと思います。

いま、肩に石灰が溜まってしまって、手が上がらないのです。
この1週間痛みでほとんど寝れていないから、「働き方を考えないと、このままやったらあかんなって。」
働き方改革について本当に考えました。

体のバランスも大事ですが、心のバランスも大事ですよね。
実際に若手のパン職人の子たちがTwitterで「辞めたい」とか呟いているのです。
「今日怒られた」とか、「時間長い」とか・・・
僕はそう言ったことに対して、メンタル弱いなとは思いません。
人間ですから、9時間以上働いたらしんどいし、週休2日以上なかったら「休み少ない」って言ってもいいと思います。

ちょうど自分も40歳を超えて肩だったり不調な箇所が出てきているし、お店を(パン職人を)続けるには、健康な体と心があってですからね。

その結果、生涯現役。
半分仕事、半分自分達の時間に使いたい。
ゆるくやっていきたいですね。
■住所
〒561-0812 大阪府豊中市北条町1丁目36-1

■電話/FAX
06-6333-1108

■営業時間
7:00~18:00(無くなり次第閉店)

■休業日
火曜日

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