シェフの仕事
~リロンデル1895のある厨房④~

昨今よく耳にするキーワードの「働き方改革」
酵母の発酵と向き合うベーカリーではなかなか取り組みが難しい問題です。
その問題を解消する秘密が ・・・ 「酵母」の切り替えだった。

パン作りにおける必須原材料は4つ。
小麦粉。酵母。塩。水。
上記4つの原材料と副材料を組み合わせれば、様々なパンを作ることができます。

今回で4回目となる〜リロンデル1895のある厨房〜。パンの美味しさはそのままに、酵母を変えることで実現した「働き方改革」などについて、大阪府豊中市にある「Le Boulanger YOSHIHIRO IKEDA」のオーナーシェフ池田義弘さんにお話を伺いました。

■まず初めにシェフのこと。お店のことについてお教えください。

48歳。
1973年 1月 12日生まれです。
おっさんの誕生日いります??

お店はオープンして7年目です。
オープンするまでは神戸屋で25年ぐらい働いていました。
神戸時代に一緒に勤めていた渡辺さん( Mille village/ミルヴィラージュ オーナーシェフ)が「クープドゥモンド」に日本代表として出られて初優勝。
その後吹田で開業。
そういった方を間近で見ていたので、自分もいつかはお店持ちたいなと考えていました。

この場所に決めた理由は、私は九州出身で大阪に出てきて初めて住んだのがこの辺りだったのです。
その後も豊中に住み続け、できるのであれば地元(豊中)でお店を開業させたいと考えていました。

お店のコンセプトなどは、そこまで強い信念とかはなく、今まで自分が作ってきたパン、頭の中で思い巡らせていたパンを作りたい。
そのためには添加物などは基本使わない。
できるだけ自然なもので。
けど、全てが全て使わないというわけではありません。
そういったことに対して徹底すればするほど、作れる商品が狭まりますので。

■オープンされた時と商品のラインナップとかは変わりました?

相当変わりました。
新しいものを作ってはやめての繰り返しをしながら、徐々に品数を増やしていきました。
今は焼き菓子などまで入れると80種類ぐらいあると思います。
その一方で、角食、山食、バゲット、カンパーニュなどは変わっていません。
特に食事パンを買われるお客様は、お目当ての商品が決まっている感じです。
バゲットでも石臼のバゲットしか買われない方もいらっしゃいます。
それだけ、その商品を気に入っていただいているのかと思うと作り手としては嬉しい限りです。

うちはネット等もやっていないので情報発信といえば、地域の情報誌に掲載していただくぐらいです。
そのため、ご近所さんの常連さんが多いです。
平日は主婦の方とご年配の男性のお客様が多く、土日の午前中は男性のお客様が多いです。
ご家族の分を買いに来てくださっているのだと思います。
「お父さん、早くパン買いに行ってきてよ!」的な感じでしょうか。

■まず初めに リロンデル 1895を知られたきっかけは?

日仏商事さんが「こんな商品出ましたよ!」ってお店に持ってきてくれたのが知ったきっかけです。
ちょうど発売されるかされた直後ぐらいです。
「リロンデル 1895」についての特徴などを説明していただいて、私の悩み事を解消してくれるのではと思いました。

長時間発酵のオーバーナイトで作るパンが多いので、生地が安定することを求めるじゃないですか。
実際テストさせていただいて感じたのは「リロンデル 1895」を使うと安定する。

はじめはバゲットのテストから行いました。
発酵をコントロール(調整)できる点が素晴らしかった。
冷蔵の温度帯に入ってからのコントロール(調整)が今まで使っていた酵母より断然よく、発酵がじんわりとしていて、且つ途中で止まってくれている。
だから、発酵しすぎない。

※冷蔵庫で生地をオーバーナイトさせる場合は、作った生地を冷蔵の温度帯に一気に持っていきたいので、うちでは金属のバット等に入れて生地を保存しています。金属のバットは熱伝導が良いため、温度が下がりやすい。
テスト結果が思い描いた通りだったので、他の製法もトライしようという感じでテストを重ねました。

■実際に使い始めて気づくことなどございました?

「リロンデル 1895」を使うまでは、パンの発酵をコントロールするためにイーストの量を日々の気温水温などの変化に応じて調整していました。 0.19%とか0.2%とかの世界です。

氷をガンガンに入れて練るとかをして調整もしていました。
フランスパンの生地を仕込んでいるのに、ミキサーボールから氷の音がカラカラとしているという・・・「パン屋あるある」だと思うのですが。

また、小麦粉を冷やしてもミキサーで高速で7〜8分回すと、どうしても生地温度が上がる。
そこを押さえられるのがこの「リロンデル 1895」
基本的には今までと同じ作り方で、イーストだけ変えたら出来たのです!

発見ですよ!

あとポーリッシュ種に良い。
ポーリッシュ種って、練る時の温度と冷やす時の温度で仕上がりがすごくバラつく。
液状なので非常に発酵が早く、早く冷やせば発酵を抑えられる。
ポーリッシュ種を使ってパン作りをされていているのであれば、絶対に「リロンデル 1895」に切り替えた方がいいです。
テスト4回やって、全て上手く行きました。

ポーリッシュ種をセミドライイースト赤を使って0.1%とか作られているのであれば、絶対にブレると思います。
ブレてしまうと、パンの香りや味が変わる。
酸味が出たり、きつい香りになったりするのです。
僕の経験上、セミドライイースト赤では毎日安定しない。

ポーリッシュ種のテストは終わっています。
まだ販売するに至っていないのですが・・・準備は万端です。
「リロンデル 1895」のハードトーストの準備はOKです。

note


※ポーリッシュ種とは。
ポーリッシュ種法は19世紀にポーランドから伝わった、液種を使った製法です。
水種とも呼ばれるように種生地の水分量は粉と同量~ 2倍ぐらいになり、柔らかい種生地になります。
ポーリッシュ種を予め長時間発酵させているので、本捏ね後の発酵時間が短く、風味も豊かになります。
また、窯伸びがいいので火の通りがよくなり、歯切れと口溶けのよいパンに焼き上がります。


「リロンデル 1895」でポーリッシュ種に関しては、シェフの仕事〜リロンデル 1895のある厨房①〜に登場してくださった京都のベーカリーmina_minaの山本シェフもポーリッシュ種に使用されるのをオススメされています。

■酵母を変えることに対して躊躇される方が多いと思うのですが、シェフはいかがでしたか?

確かに酵母を変えることに対して躊躇される方多いと思います。
けど小麦粉を変えることほどでもないと思います。

■リロンデル1895をお使いになられる前は何をお使いでした?

セミドライイーストの赤と金です。

生イーストは会社に勤めていたときは使っていましたが、独立するタイミングで酵母を変えました。
今まで様々な酵母を使ったパン作りを見てきているし、生イーストは賞味期限が短いじゃないですか。
包装形態も紙で使いにくいし、セミドライイーストは保存しやすい形態で冷凍庫に「 ポン!」と置くだけでいいですし。

■何名かのシェフがリロンデル1895を導入して以降、作業効率が上がったとおっしゃられます。シェフのお店では導入後、変化はありましたか

すごく変わりました。
個人でされているお店の場合、仕込みは全てシェフが行うことが多いと思うのですが、うちの場合は3年目と4年目のスタッフに仕込みの一部を任せるようになりました。
食パンなどは僕が仕込みますが。

パン屋で仕込みを自分以外の人間に任せるなんて昔では絶対にあり得ないことです。
パン(お客様に購入していただく商品)の元となる生地を作る。
一番重要な工程が仕込みですので。
けど、「リロンデル 1895」を使うようになって可能になりました。
任せるにあたっては、水の量・氷をどれだけ入れるのかなどを事細かく自分が考えて伝えています。
特にオーバーナイトの場合は、かなりミキサーで練るので温度さえ間違えなければ、任せたスタッフでも出来る様になります。
実際に生地を練ってくれるのは機械ですし。

そのことで僕が楽できるというか、休憩ができるようになりました。
個人経営されているベーカリーさんにおいて、いかに元気で長く働くかみたいな事を考えると、働き方はすごく大事だとつくづく思います。

まず、お酒をひかえることですね!
お酒で体壊す人も多いですし。
あと長時間労働をパン屋は無くさないと、日本にパン職人がいなくなるのではと危惧しています。
パンに関してはかろうじて日本は世界でもトップクラスの技術力を有しています。
そのため、中国・韓国・東南アジアなどに日本の技術者が教えに行っているじゃないですか。
やる気のある人も多く集まってくるでしょうし、いずれ追い抜かれるのではと思うのです。
パン屋にとって長時間労働はある程度仕方がないことだと思うのですが、さまざまな取り組みや製法、「リロンデル 1895」のような画期的な商品を使ったりしながら効率化を行い解消することができると思います。

パンと向き合うと自ずと時間がかかる。
一所懸命パンと向き合う程、長時間労働になる。
なかなか難しい問題です。

■最後になりましたがお店の展望についてお聞かせください。

数多くのお客様に自分の作ったパンを食べていただくことです。
人気のある食パンなどは味を変えず、新商品も出してお客様に選んでいただく楽しさを提供することが大事かと思っています。

また、お店での販売のほかに、週3回とフェアーの時だけですが阪急百貨店さんでも販売していただいています。
百貨店さんがあるときはかなりの量を作らないといけないのです。
今年は有難いことにすごい量のシュトーレンをご注文をいただいきました。
通常のお店売り+百貨店さん分を作りますので、流石にしんどいですがお店の宣伝になるので頑張っています。

私が歳を取るとともに、うちの店を好きな人がたくさん増えれば最高ですね。
そうなったら営業時間を変えていこうかな。
どんどん時間を短くしていく。(自分に合わせて)

■住所
〒560-0001 大阪府豊中市本町6-7-9

■電話/FAX
06-6151-2729

■営業時間
7:30~19:30
売り切れないように作っていますが、売り切れてしまう時も多々ございます。
本当に何もなくなれば、シャッターおろしています。
少しお早めに来ていただけますと幸いです。


■休業日
金曜日

■HP
なし

■SNS
なし

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