とかち小麦ヌーヴォー
5周年特別企画

「農家とつながるパンづくり」


~持続可能で豊かな食文化を未来に継いでいくために~


2018年9月24日(月曜日)
会場:株式会社トクラ大阪
主催:とかち小麦ヌーヴォー実行委員会
協力:株式会社トクラ大阪、戸倉商事株式会社/ママパン

PAINDUCE 米山雅彦氏
BÄCKEREI BIOBROT 松崎太氏
小麦農家 斎藤一成氏

ママパンシェフ通信Vol.8で取材させていただいた、 大阪市中央区にある「PAINDUCE/パンデュース」の米山シェフと兵庫県芦屋にある「BÄCKEREI BIOBROT/ベッカライビオブロート」の松崎シェフ。
関西を代表する2名のシェフによるヌーヴォー小麦を使用した製パン実演と、北海道十勝の小麦農家の斎藤さんを交えて「より良いパンづくりを目指して私たちが繋がる理由」についてのトークセッションを行っていただきました。


米山シェフの製パン実演

スム・レラ ブール

 
-ヌーヴォー使用小麦について-

スム・レラとは、十勝産小麦「ホクシン」のみを使用し、硬い外皮のみを取り除いて石臼挽きにて製粉した小麦です。
低温で挽く石臼挽きなので、豊かな香りと甘みなどの自然な小麦の風味が感じられます。

生地は柔らかいので、パンチする際は、摘まんで折り込みと言った感じで、腰の強さを出していく。ベンチタイム後に、生地の表面に太白胡麻油を刷毛で塗る。

その後、成形に。
※成形方法が独特ですので、是非成形動画をご覧くださいませ。

2次発酵を約20分取った後、生地が緩んできたら綴じ目を上にしてオーブンの中へ。

クラストはパリッと、中はもちもち!
旨み・甘みを感じられ、粉の味がダイレクトにつたわってくる一品でした。

ヌーヴォー食パン

 
-ヌーヴォー使用小麦について-

湯種で「ヌーヴォーキタノカオリT85」を使用。
硬い外皮のみを取り除いて石臼挽きにて製粉した小麦です。粒子が細かいため使いやすく、小麦本来の旨味・甘みを楽しんでいただけます。
本捏ねで「ヌーヴォー北海道ゆめきらり」を使用。
「ゆめちから」「はるきらり」「きたほなみ」をブレンド。窯伸びが良く、風味豊かな仕上がりになるのが特徴です。

ヌーヴォーキタノカオリT85使用した湯種と、ヌーヴォー北海道ゆめきらりを使用した本捏ねに混ぜ合わせ、さっくりとした食感を持たせるために太白胡麻油を入れた食パン。 講習会参加されたお客様が、パン教室の先生や、家庭製パンされる方が多かったので、特別に手捏ねで生地を仕込んでいただきました。
「ニーダーやミキサーなどに頼らずに、手捏ねでがんばって!」とシェフがおっしゃっていました。

湯種と合わせて吸水97%の生地をまとめ上げていく。ヒント沢山の動画です!!
繋がるというかは、まとめると言った感じで生地を作る。

ホイロ後、スチーム入れて焼成。

そのまま食べると、みずみずしく、しっとり・もっちり。
軽くトーストすると太白胡麻油を入れているので、サクッとした食感が!!!噛めば噛むほど甘さが口の中に広がります。

松崎シェフの製パン実演

今回の講習会が、松崎シェフ初めての講習会での実演との事で、実現するまで米山シェフが、ランチにお誘いしたりしたそうです。
ご自身あまり多くは語らないとのことだったのですが、ドイツで学んだこと、それを元に現在までパンづくりをされている事など、普段では聞けない様々な事をお話しくださいました。

フォルコンブロート

 
 

中川農場の「ノア」と言う小麦全粒粉を使用。10年以上農薬や化学肥料を一切使用していない畑から収穫された小麦だそうです。

前日にお店で仕込んでいただいた生地。
※冷蔵1℃で一晩

お店で仕込んでいただいたサワー種。

― サワー種について ―
サワー種を使用すると酸味が出てしまうため、あくまでも味わいのためだけに少量使用。

― ミキシングのポイント! ―
水以外の材料をミキサーに入れて最初は7割程度の水で硬めに捏ねる。
生地の様子を見ながら加水する。
酵素活性が強い粉の場合はごく短時間でミキシングを終える。
特に酵素活性に問題なければ、10~12分程度低速で捏ねる。

 
-モルトと糀のお話-

以前はビールに使われる自然醸造のモルトを特別に分けてもらって使っていたそうですが、ビールの需要が伸びたため手に入らなくなり困っていた時に、たまたま読んでいた糀の本から、モルトと同じ働きがあると気付き、代替えとして乾燥玄米麹を取り寄せ自分で粉砕して使用するようになったそうです。
モルトも糀も小麦粉の中でデンプンが糖に分解されたものを栄養としてイーストが活性するだけでなく、たんぱく質が分解されることでアミノ酸となり旨味成分になるんです。

トークセッション

PAINDUCE 米山雅彦氏 × BÄCKEREI BIOBROT 松崎太氏 × 小麦農家 斎藤一成氏
進行役:アグリシステム株式会社伊藤専務によるトークセッション



農家さんとつながる理由

<米山シェフ>
日本人なので国産小麦使って日本のパンを作ろうかなと。
小麦を育て作って下さっている農家さんの姿などの風景が語れるパンが作りたい!

<松崎シェフ>
以前は、自分が目指している方向へ向かえば良いと考えていたので、農家さんと繋がる必要は無いんじゃないかと考えていました。
しかし、実際に農家さんとお会いしてお話を聞くと、仕事に対する考え方や、思想などに引き込まれたことで、この人の小麦を使いたいと思えたし、実際に作って食べてみて「おいしい」と感じたので繋がれて良かったと思います。

パン屋さんとつながる理由

<斎藤さん>
材料として小麦や、野菜を使用しているシェフの方々と会って話をするうちに、もっと良いものを作らないといけないと言う考えが強くなった。

土壌にストレスを与えず過度な農薬を避けるなど、育て方にも変化が生まれた。

アグリシステムがシェフと
農家さんをつなげたい理由

<伊藤専務>
どんなシェフでも合わせたいという訳ではない。
シェフによって合わせたい農家さんを紹介する。なんか直感ですよね!

オーガニック(有機)について

<米山シェフ>
知識が無いからこそイメージとして、より安全なものをという考えです。
自然栽培という昔のやり方が、もっとも負担のかからない農業だと思っています。
消費者と同じ目線で勉強し、正しいと思える範囲内で使って、お客様に知ってもらいたいという意味でオーガニックにシフトしていきたい。
パンデュースでどこまで出来るかという意味でも興味があります。

<松崎シェフ>
昔からオーガニックありきという訳ではないんです。
修業時代のドイツではオーガニックのお店でしか仕事していなかった。
イーストフードを使わずビタミンCの代わりにオレンジジュースで仕込んでみたり、小麦が強すぎるときは、ライ麦を混ぜるなど自然なものだけで代用することを学びました。
作り手としてオーガニックの世界に身を置いたことで、元へは戻れない。
オーガニック以外のものを使うことに対しては、自分に嘘をつきだましているような気持になり、罪悪感すら感じてしまう。

<斎藤さん>
天候不良な日が続いた時でも、オーガニックの畑はそれほど悪くなかった。(被害が少なかった)
酢・石灰・残菜物などの有機肥料を使用することで菌が活性する。
良い菌の活動が活発になるので畑の土がとても良い状態になる。
土壌が良いと育つ作物も良い物が収穫できるのですよ。

<伊藤専務>
オーガニック以外を否定するつもりはないんです。
考え方や、ライフスタイルと言う意味でのオーガニックという考え方が大事だと思います。
ちなみに日本の有機栽培率は0.4%、ヨーロッパでは5%以上。この差をどう考えるかが今後の課題かもしれませんね。

オーガニック(有機)の
おいしさについて

<米山シェフ>
オーガニックのイメージは「すごくおいしい」という印象が強い。
小麦・野菜でもすごく自然で味も香りも優しいと感じます。
作り手である農家さんの力量によって随分と品質に差があると思います。

<松崎シェフ>
昔は無添加で自然なものほどおいしくなかった。
修業時代のドイツで食べたものは特別おいしかったという感じではなかったのですが、普通に食べれると感じではありました。
オーガニックでパンを作る以上、まずいものは作りたくない。
一世代、二世代前のまずい自然食品のようにはしたくないんです。

<斎藤さん>
今の有機の野菜は、おいしいものがほとんどです。
有機認証されている肥料はきちんと選び、使えるものは使っていく。
きちんと考えて育てないと、土壌の栄養すら足りなくなり、その畑で採れる野菜の味は薄くなってしまいます。農作物にも成績があり、結局のところ育てる側の力量次第なんです。

新麦について

<米山シェフ>
小麦でも野菜でも、新しいからといって必ずしもおいしいとは限らない。
個人的には小麦に関しては、挽きたての方がおいしいと感じる。
しかし、小麦の酵素活性を落ち着かせるためにエージングさせるのが一般的。
ヌーヴォーはパン用小麦として挽きたてに近い方なので、おいしいですよ!

<松崎シェフ>
そもそも、小麦は収穫してすぐに使うものではない。
当初は小麦でヌーヴォー?をする意味・理由が全く分からなかった。
採れたて挽きたての小麦は水分も多く、酵素活性も強いので、製パンには不向きなのですが、実際に使用すると意外にもそうでもなかった。

思っていた以上に吸水も良く、新麦も悪くないなって思いました。

育てる人 × 作る人 × 食べる人

その年に収穫された小麦に感謝するお祭り「とかち小麦ヌーヴォー」
意識すると見えてくる様々なこと。
見えない1本の糸という訳ではないのですが、みんな繋がっている。
そんな繋がりの一員にママパンもなっていることを意識して「とかち小麦ヌーヴォー」を盛り上げていければと感じた1日でありました。

なにより、シェフのお二方、農家の斎藤さん、アグリシステム株式会社の伊藤さんと小尾さん、そしてご参加下さった皆さまの笑顔が印象的な講習会でありました。

左から、アグリシステム小尾さん、小麦農家の斎藤さん、アグリシステム伊藤専務、松崎シェフ、米山シェフ、弊社取締役事業部長の杉江。
皆さん、ありがとうございました!

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