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砂糖類について

前回までは【パンづくりの基本材料】として、小麦粉、パン酵母、塩、水の4種類について順にお話ししました。
今回からは【パンづくりの副材料】についての簡単なお話です。
上記の基本材料4種類をベースに砂糖類や卵、乳製品、油脂などが加わってソフトなパンに仕上がります。

糖類について

今回は「砂糖類」についてのお話ですが、先ず最初に「糖類」について簡単に説明を。

単糖類
ぶどう糖や果糖のように、ひとつで存在しているもの。
少糖類
「オリゴ糖類」とも。
砂糖(上白糖やグラニュー糖など)のように単糖が2個や3個など少ない数で繋がって存在しているもの。
2個の場合⇒二糖類。3個の場合⇒三糖類。
多糖類
デンプンのように、たくさんの単糖が繋がって存在しているもの。

【パンづくり】においては、それぞれが非常に多くの働きを持つものなのですが、詳しく説明すると小難しくなるので、今回は「少糖類」で二糖類である「砂糖」を中心にお話しします。

砂糖の分類と役割

砂糖は精製方法によって、大きく分けて「含蜜糖」と「分蜜糖」に分けられます。
精製時に糖蜜を分けるか分けないかなのですが、「含蜜糖」は精製の際に糖蜜を分けずにミネラル分も多く含んだ状態です。
「分蜜糖」は糖蜜を分離させて、甘み成分である「蔗糖(しょとう)」の純度を高くしたものです。
特に徹底的に蔗糖以外の成分を取り除き、純度の高いものが「精製糖」で、一番純度の高いのが「グラニュー糖」です。

砂糖類のパンづくりにおける効果としては、先ず「パン酵母の栄養源として取り込まれ、炭酸ガスとアルコールを発生させる発酵活動の源となる」、その次に先程の発酵活動で使用されなかった糖分が「パンの甘さ」に繋がり、また焼成時に「メイラード反応によって焼き色を良くする」、「柔らかくソフトな状態に仕上げる」、「焼成後の水分の蒸発がしにくくなるため、老化を遅らせる」などがあります。

砂糖やその他の糖類の特性

お菓子づくりも含めて【パンづくり】における糖類の役割を理解するには、先ず砂糖やその他の糖類の特性をよく理解することが大事です。
そうして良いパンやお菓子をつくるには、目的にあった糖類の使用が重要となってきます。

パンづくりで、主に使用するのは先ず「上白糖」です。
その他には「グラニュー糖」、ミネラル分を多く含んだ「ブラウンシュガー類」、「蜂蜜」などがあります。

上白糖
基本的には最も多く使用されます。水分含有量が多いので、よりソフトに仕上がりやすく、含まれる転化糖の関係でより綺麗な焼き色が付きやすい。「保水力」も高いので「老化」が遅くなります。*柔らかさが長持ちしやすい。
グラニュー糖
あっさりとした甘みが特徴で、甘みを抑えたい時や焼き色を少し抑えたい時などに使用。
ブラウンシュガー類
ミネラル分を多く含み、それぞれの特徴的な風味がある。
蜂蜜
それぞれの種類で特徴的な風味を持つのが特徴。
基本的には風味を活かしながら、よりしっとりソフトに仕上げたい時などに使用しますが、大量に使用すると酵素の関係でパンが上手く膨らまない時もあります。その場合は「酵素失活タイプ」の蜂蜜を使用することもあります。
また、蜂蜜の成分は「糖分が約80%」、「水分が約20%」ですので、換算が必要となります。

 ※蜂蜜の重量換算について参考はこちら
 → はちみつ特集

※「砂糖類」とは違って「糖質」でいうと、「小麦粉中の糖質」は『バゲット』などのリーンなパンの発酵活動の源のひとつになり、麦芽糖から抽出して製造された「モルトエキス」なども補助的に添加されます。


例外として、今では「トレハロース」もよく使用します。
こちらは多機能糖であるがゆえに食品添加物扱いとなっていますが、自然界の多くの動物や植物、微生物の中に存在する成分です。「パン酵母」や酒酵母などの微生物にも含まれています。

トレハロースについて(食品添加物)

「旧約聖書」にも登場するいにしえから存在するトレハロース。
トレハロースとは2つの分子のグルコース(ブドウ糖)が結合した還元性を持たない二糖類です。
自然界の多くの動物や植物、微生物の中に存在する成分で「パン酵母」や酒酵母などの微生物にも含まれています。

人間の血糖(血液中の糖)は「ブドウ糖」ですが、昆虫類の血糖は主に「トレハロース」です。
生命にも大きな影響を持つ驚異的なスタミナ源であり、スズメバチが長距離飛行出来るのも「トレハロース」のおかげだといわれています。
人間にとっても高い持久力効果があるため、マラソンランナーのドリンク剤や市販のスポーツドリンクにも配合されています。

今では「澱粉」から工業大量生産されていますが、ごくごく当たり前に自然界のありとあらゆるところに存在する「トレハロース」。
最近の研究では「地球環境問題」にも大きな役割を担っており、日本国内でも色々な業界・業種、様々な場面で多く使用されています。

■ 製パン製菓での効果 ■

トレハロースは「澱粉老化抑制」の高い糖で、様々な機能性の中のひとつ「保水性」を持ち、化粧品や入浴剤にも使用されるぐらいの非常に高い「保水力」があります。
保水力の高さは澱粉老化(硬くなったりパサついたりする現象)を抑制することに繋がります。
澱粉老化は製品中の水分含有量30~60%、温度0~5℃の状況下で最も進行しやすいのですが、トレハロースを使用すると含有水分の大半が結合水(砂糖やトレハロースと結びついている水)となり、製品の中を自由に動き回る自由水がほぼ無い状態となるので、離水もしないし、老化もしにくくなります。
⇒保形性があり、柔らかい状態が長持ちします。微生物の生育を抑制し、腐敗もしにくいです。

水分を保持する能力の高い特徴でいうと、【生命力】もあります。
人間も脱水症状で死に至ることもありますが、生きていく上で生物にとって水分は非常に大事です。
水分の乏しい砂漠で生き続けられる微生物のクマムシや植物のイワヒバなどもトレハロースの保水力で生きながらえていますし、きのこ類の「干ししいたけ」を水に浸けるとすぐに潤った状態に戻るのも、しいたけに約20%も含まれているトレハロースの保水力のお陰なのです。

また、砂糖の約38%という「低甘味」であったり、還元基(他の物質と反応しやすい)を持たず還元性を持たない特徴から熱や酸に強く、「酸化」が起こりにくいのでカラメル化も起こりにくいことから「非着色性」(ハイジの白パンなどに有効)であったり、「気泡安定性」(泡立てた卵の気泡の安定性など)、冷凍・解凍時のダメージを抑制するなど「冷凍耐性」も高いです。

高い保水力
澱粉老化を抑制することに繋がるため、離水せず老化もしにくくなる。
⇒保形性があり、柔らかい状態が長持ちする。
微生物の生育を抑制し、腐敗もしにくくなる。
低甘味
砂糖の約38%の甘味
非着色性
還元性を持たないため熱や酸に強く「酸化」が起こりにくい。
 ⇒ メイラード反応とカラメル化が起こりにくい。
 ⇒「非着色性」が高い。
気泡安定性
卵白など、泡立てた際の気泡が安定しやすい。
冷凍耐性
冷凍・解凍時のダメージを抑制する。

Basic Key

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