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生地改良剤について

【パンづくりの副材料】、最終回は「生地改良剤」についてのお話です。

生地改良剤とは?

一般的には「イーストフード」とも呼ばれていますが、パン生地をより良くするための材料のことです。

基本的にはイーストのフード(餌)となって発酵を促し、パン生地を改良する添加物で、約10種類の化合物によって構成されています。
業務用材料として、各製造メーカーから様々な製品が発売されており、パン生地への効果も違っています。

製パンにおける「イーストフード」の役割は大別して3つ。
1.水の硬度を変える
2.パン酵母の栄養となる。
3.グルテン組織の安定と強化を図る。

水の硬度を変える

製パンに適するのは「やや硬水」が理想なのですが、日本の水は比較的「軟水」です。
軟水を使うことで、少しパン生地がダレ気味になったり、時にはベタつき作業性を低下させます。

そこで、イーストフードを使用することで水道水を「やや硬水」に改良します。
「やや硬水」に改良することで、パン生地中のグルテン組織を強化させてダレやベタつきを防ぎ、適切な発酵活動の中パンづくりを行なえます。

特に大型の『山食パン』や砂糖量も多く生地的にダレやすい『菓子パン』生地に効果的です。

パン酵母の栄養となる

イーストフードに含まれている有機酸には、塩化アンモニウム・硫酸アンモニウム・リン酸アンモニウムなどがあります。
これらはイーストが生地中で摂取しにくいもので、アンモニア化合物という形で添加してイーストに栄養を補給します。
その効果で、イーストの炭酸ガス発生を手助けすることが出来ます。

特に糖分の少ないリーンなパン生地においては、生地中の糖分が欠乏してくるに従って炭酸ガス発生力は低下します。
その時にイーストフードが活性化を助けるのです。

グルテン組織の安定と強化を図る

小麦というのは植物であり、農作物であるので、毎年の収穫ごとに品質のブレが生じます。
製粉時には規格基準があり品質は管理されているものの、いつも同じ状態(数値)の粉が手に入るとは限りません。

また、挽き立ての若い粉とエージング(熟成)をした粉では、パン生地の吸水量や生地のミキシング時間、生地の発酵状態まで違ってきます。
特に若い粉の場合、粉の酸化が未熟ですので、パン生地にした時のベタつきが増幅されます。

そこで、酸化作用のあるイーストフード(酸化剤)を添加して、生地中のグルテン組織の安定と強化を図ります。

生地改良剤の使用について

イーストフードなどは食品添加物として記載をされるものですが、厚生労働省によって使用量が制限されており、身体にはほとんど影響を及ぼさないような基準値で適切な使用方法によって安全性が確保されているものでもあります。
過剰摂取や不適切な使用などには気を付けないといけませんが、「生地改良剤」があるからこその良さがあります。

・日持ちのするパンを買うことができる
・数日たっても柔らかな食感を味わうことができる

生地改良剤は、美味しいパンを手軽に味わうことができる材料でもあるのです。

最近では、乳化剤を使用せず作られたナチュル志向の商品や、焼成時に失活して食品添加物と表示する必要のない商品もありますので、ご自身の求めるパン作りに適したものをうまく選んでご使用ください。

ビタミンC(アスコルビン酸、アセロラパウダー等)

グルテン組織を強化し、パン生地の強靭性と力を向上させる効果をもたらします。
インスタント・ドライイースト自体に含まれていたり小麦粉中に添加されたりしていますが、焼成中に無くなり焼き上がったパンには残存しません

モルト

モルトとは、大麦を主原料とした加工食品で、「大麦に適度な水分を与えて発芽させ、その麦粒を粉砕したものを酵素糖化し、濃縮したもの」のことです。
様々な種類がありますが、製パンでよく使われるのが水飴状の「モルトシロップ」と粉末状の「モルトパウダー」です。

製パンにおいて「モルト」を選択する際のひとつの判断基準に【酵素の活性力】があります。
「モルトパウダー」は、糖類の含有量は高くないですが、含まれる酵素類の安定した働きが期待出来ます。
「モルトシロップ」は、国産メーカーのものとママパンでも販売中のイタリア産ユーロモルトでは【酵素の活性力】が全く変わってきますので、同じ「モルトシロップ」でも使用時には注意が必要です。

製パンにおけるモルトシロップの効果

1.酵母の活発な発酵を助ける

モルトシロップに含まれる糖類の多くは、酵母が発酵に直接利用出来る麦芽糖です。
さらに、モルトシロップに含まれる酵素(デンプン分解酵素:αアミラーゼ)は、小麦粉中の損傷デンプンをイーストの好物であるデキストリンやブドウ糖に分解するため、継続的に糖類が供給される状態になります。
この効果により、発酵が促されると共に発酵の持続性が高まります。

2.パン生地の機械耐性を良くする

含まれる酵素の力で、生地が滑らかになり伸展性が向上します。
これにより、モルダーやディバイダー、シーターなどの機械使用時の生地へのダメージが減少します。

3.窯伸びが良くなる

発酵が促されることで生地中のガス量が増加すると同時に、酵素によって生地が滑らかになります。
このため、窯伸びとパンの内相が良くなります。

4.パンの焼き色と香味を良くする

酵素の力で生成された糖類と発酵で生じた様々な成分の効果で、美味しそうな焼き色と芳醇な香味の焼き上がりになります。(カラメル化とメイラード反応による効果)

5.パンの老化を遅らせる

酵素により保水力の高いデキストリン(デンプンが糖類に分解される途中の物質)が生成されるため、焼き上がったパンの老化(パサつき)が遅くなります。

砂糖類を配合しないバゲットなどのフランスパン類や少量の砂糖類しか配合しないパン生地においては、小麦粉中の酵素(デンプン分解酵素:αアミラーゼ)だけでは不十分な場合があってイーストの発酵に時間が掛かったり、ガス発生力が弱いためモルトシロップ中に含有する酵素(デンプン分解酵素:αアミラーゼ)の力を借りるのです。

モルトシロップの代わりに砂糖を配合した場合、生地中の糖量が一時的に増えて発酵は促されますが酵素の働きは無いので、上記5つの効果は異なる上に全く効果がないものもあります。

モルトの酵素の力

酵素の力はリントナー価という単位で表されます。
数値が小さいと酵素の力は弱く、大きいと酵素の力が強いことを示します。

国産のとあるモルトシロップのリントナー価が20に対し、ユーロモルトのリントナー価は49です。
リントナー価が大きいと酵素の働きで生地が緩みます。
モルトシロップの中でも商品によって数値に大きな違いがあるので、添加した際の生地の様子も変わってきます。

どういったパンにしたいのか(生地を緩ませたい等)をイメージして、上手くお使い分けいただければと思います。

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